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【フタコン通信】VOL.029(2014年08月25日号)


【豆知識】

ヘリコバクター・ピロリ菌について

昨年2月より慢性胃炎に対するヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌と略します)の除菌が保険適応となり、一般検診等でもオプションで検査できるようになりました。

今回は技術的な話ではありませんが、そのピロリ菌について少しお話したいと思います。

胃内にピロリ菌感染がある人の割合は年齢とともに増え、50歳以上の日本人の感染率は50%以上といわれています。
通常、細菌は強い酸性の環境である胃内では生存できませんが、ピロリ菌は自ら生成したアンモニアにより胃酸から身を守っています。胃粘膜はピロリ菌の出す アンモニアや毒素により障害され慢性胃炎が起こり、萎縮性胃炎へと進展していきます。
また慢性的な炎症は粘膜の修復力を弱め、胃・十二指腸潰瘍を発症しやすくします。
ピロリ菌に感染している人がすべて胃・十二指腸潰瘍になるわけではありませんが、胃潰瘍の70〜80%、十二指腸潰瘍では90%以上の患者さんにピロリ菌感染が認められます。ピロリ菌感染が胃がんのリスクを高めることもわかってきています。

冒頭にも書いたように2013年2月より慢性胃炎に対するピロリ菌除菌が保険適応となり、胃カメラで慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍が認められれば保険の適応で除菌ができます。将来の胃がん発生を予防する意味でも、ピロリ菌除菌は大きな意義があるという事です。

次にピロリ菌除菌の流れについて話します。

ピロリ菌の検査は血液、便、胃カメラによる組織検査のいずれかで行います。検査が陽性だった場合は除菌のために3種類の薬を1週間(1日2回)服用します。この際の除菌の成功率は70%程度といわれています。
もし除菌が不成功の場合は2次除菌(3種類の薬を1週間)を行います。数%程度で2次除菌も不成功となる確立があります。その場合は保険適応外となりますが3次除菌が必要となるそうです。

尚、除菌が成功しても今ある症状が必ず改善するとはいえません。除菌により胃がんの発生リスクは減りますが、胃がんが完全に予防できるわけではないので、定期的な胃がん検診は必要となります。
また、胃酸が強くなり、逆流性食道炎の症状が出る、または悪化する可能性があるともいわれたり、胃の調子が良くなることで体重が増加する可能性もあるとの事です。じぇじぇ…

このような背景からか、今はどの病院でも胃カメラの予定がいっぱいで3ヶ月先になることもまれではありません。しかし保険適用で胃がんの発生リスクを低減させられる事が出来るのであれば、治療しておかない手はないでしょうね。これも大事な一つの自己のリスク管理という事で。


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