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【フタコン通信】VOL.071(2021年08月25日号)


【豆知識】

「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)について」

 今回は、日本各地に災害級の降水をもたらしている線状降水帯について、お話ししたいと思います。

 最近よく耳にする「線状降水帯」ですが、日本でこの用語が頻繁に用いられるようになったのは、平成26年8月豪雨による広島市土砂災害以降でした。
 線状降水帯に厳密な定義はありませんが、気象庁では「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同 じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に延びる長さ50〜300キロメートル程度、幅20〜50キロメートル程度の強い降水をともなう雨域」と説明し、天気予報等の予報用語として用いられています。

 日本全国で発生し、特に西日本(九州と中国・四国)に多く、発生メカニズムは解明しきれていないものの、発生しやすい4条件として以下のような事が考えられています。
  1.雲の元となる暖かく湿った空気が継続的に流入
  2.1の空気が山や冷たい前線とぶつかるなどして上空に上昇
  3.積乱雲を生みやすい不安定な大気状況
  (数千メートル上空に冷たい空気があり、対流で強い上昇気流が生まれやすい環境)
  4.積乱雲を流しては生みだす一定方向の風
 上記条件がそろうと、発生した積乱雲が風で流され、その後ろに湿った空気がすぐに供給されて新たな積乱雲が次々と発生し、 ベルトコンベヤーのようにこれを繰り返す「バックビルディング(後方形成)現象」が起き、積乱雲が一直線に並ぶ事で直下に集中豪雨(ゲリラ豪雨の行列のようなイメージ)をもたらします。
 ただし、条件がそろっても発生するとはかぎらず、未知の仕組みが存在する可能性が高いそうです。
 また、局地的豪雨は過去40年の統計で増加傾向にあり、地球温暖化が影響している可能性があるのに対し、線状降水帯は横ばい傾向で、雨量や降水範囲も特段の変化はなく、温暖化との関連は不明という事です。
 参考に近年で起きた線状降水帯による豪雨には、以下のようなものがあります。

  ・平成24年7月九州北部豪雨
  ・平成25年8月秋田・岩手豪雨
  ・平成26年8月豪雨(日本各地で発生)
  ・平成27年9月関東・東北豪雨
  ・平成29年7月九州北部豪雨
  ・平成30年7月豪雨(西日本豪雨)
  ・令和2年7月豪雨(日本各地で発生)

 そして、今年(令和3年8月)も西日本で豪雨をもたらしたばかりです。
 このように線状降水帯は、ほぼ毎年、災害級の降水をもたらす非常に危険な自然現象ですが、現在では発生メカニズムも明確ではなく、予測の難しい未知な自然現象です。
 ただし、これからも日本各地に発生し、私達の生活を脅かしていく事は間違いないと思われますので、常日頃から災害に対する準備等を心がけましょう。

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